- 歯科矯正する際のリスクって?
- 大人だとリスクが高いの?
歯並びがキレイになって歯の健康面も向上する歯科矯正ですが、やはり治療による負のリスクが心配ですよね。
特に私のような40代後半アラフィフで矯正を始めたオッサンは、併発症のリスクがさらに高いんじゃないかと…
そんな不安を払拭するため、20を超える矯正歯科のウェブサイトやネット上に公開されている文献を読みまくりました。
まあ、色々読みすぎると逆にもっと不安になるという話もありますがw
この記事では、歯科矯正にはどんなリスクがあるのかを、
- 大人の矯正ではリスクが高まるのか?
- リスクを下げるために私たち患者ができることは?
といった観点を交えながらまとめてみました。
目次
歯科矯正治療にはどんなリスクがあるのか?
矯正治療にあたっては、歯科医から治療によって起こるかもしれない併発症のリスクの説明を受けます。
私も矯正前にリスクの説明を受け、先生と一緒に治療ゴール達成に向けて最善をつくすことに同意する「治療同意書」にサインをしました。
しかし、矯正治療の併発症って色々あるんですね。
同意書に書かれている併発症を並べると、
- 虫歯・歯周病
- 歯を動かす痛み・口内炎
- 歯根吸収
- 歯肉退縮
- ブラックトライアングル
- 歯髄壊死
- 顎関節症
抜歯後感染インプラント周囲炎インプラントの脱落
もう多すぎて矯正するのをやめようかとさえ思うレベルw。
打消し線をした項目は私自分の矯正治療とは無関係の併発症。抜歯はしましたが矯正前に済んでいますし、インプラントしていないので。
まあ定型の同意書なので、矯正治療で起きる可能性のあるものが全て並べられている感じですね。
以下それぞれのリスクを、
- 大人の矯正ではリスクが高まるのか?
- リスクを下げるために私たち患者ができることは?
といった観点を交えながら詳しくみてみましょう。
歯科矯正のリスク1:虫歯・歯周病
歯列矯正のリスクの一つ目は虫歯・歯周病。
▲上の動画は、裏側矯正が終わって器具を外したら歯周病になっていたという方。若くて歯周病とは無縁そうなんですけどね…
特にワイヤー矯正では歯に複雑な器具が着くので歯ミガキしにくくなり、虫歯や歯周疾患のリスクが増加。
矯正中の虫歯の発生リスクについて、1985年開院の御茶ノ水にある矯正歯科専門医院坂本矯正歯科クリニックによると、
治療前後の虫歯の発生率を調査した結果15%の増加がありました。治療しない時の増加率が10%ですので、それを上回っていました。
坂本矯正歯科クリニック
矯正している人は歯ミガキなどのセルフケアに相当気を付けているはずですが、それでも矯正していない人に比べると虫歯の発生率が高いんですね。
矯正中の歯周病発生リスクについては、残念ながら具体的な数字を見つけられませんでした。
虫歯・歯周病を防ぐには
なんといっても私は重度の歯周病と宣告されたアラフィフのオッサン。さらに歯並びが悪いため、重なった歯と歯の間が密かに虫歯になっていました。
そんな私たち大人、特に歯周病と言われた人が一番気を付けるべきは、
- 矯正する前に虫歯と歯周病をしっかり治しておく!
- とにかく再発させないようケアを徹底!
これしかないですねw
私はふつうの歯ブラシと歯間ブラシのほか、歯医者さんから勧められたワンタフトブラシ(筆のように細いブラシ)も使っています。
また、たまにプラークチェッカー(歯についた歯垢を赤く染めるやつ)を使って、ちゃんと歯をみがけているかチェックしています。
結構がんばっているつもりなんですが、果たして虫歯や歯周病にならずに矯正を終えられるか…
歯科矯正のリスク2:歯を動かす痛み・口内炎
歯列矯正のリスクの2つ目は歯を動かす痛み・口内炎。
▼歯を動かす痛みの原因などについては以下の記事にまとめています。
関連記事 【寝れない?死にそう?】矯正中の歯の痛みって?何日続く?ピークは?
口内炎は、特に表側ワイヤー矯正の場合にブラケットやワイヤーがあたって頬の内側の粘膜が炎症して痛むというもの。
ツイッターで矯正中の人をチェックすると、『歯が痛え~』『口内炎できた~』なんてつぶやきが常に目に入ってきますw
川口駅から徒歩2分の矯正治療専門医院、清村矯正歯科が公開しているアンケートによると、約9割の人がなんらかの痛みを感じているとのこと。
多かれ少なかれ、こういった痛みは避けて通れないってことですね…
また痛みの感じかたを年代別にみると、
- 歯を動かす痛み・粘膜の痛みいずれも10代が一番感じにくい
- 歯を動かす痛みは20代が一番多く30代以降は減少傾向
- 粘膜の痛みは年齢が上がるにつれて増加傾向
年を取ると歯が動きにくくなって痛みも強いのかと思いきや、歯を動かす痛みは年を取るとともに減るというのが意外ですね。
一方、年を取ると粘膜が弱ってくるからでしょうか、粘膜の痛みは年を取るほど増えるようです。
歯を動かす痛み・口内炎を防ぐには
歯を動かす痛みや口内炎は、それぞれ発生の仕組みから私たち患者が完全に防ぐことはできません…
ただ、こういった痛みは矯正中ずっと続くわけではなく、
- 歯を動かす痛みは初めて装置を着けた日や調整日から数日間
- 口内炎は矯正スタートから時間が経つほどできにくくなる
というのが一般的。
関連記事 【寝れない?死にそう?】矯正中の歯の痛みって?何日続く?ピークは?
本当にツラいときは、
- 痛み止めを飲む
- 矯正用ワックス(装置の突起が粘膜に当たらないよう装置につける粘土みたいなもの)を使う
みなさんこのように痛みを乗り切っているようですね。
なお矯正歯科のウェブサイトを見まくったところ、歯を動かす痛みは、必要以上の力をかけると強くなるというのが通説のようです。
これは私たち患者ではコントロールできないので、できるだけ腕のよい矯正歯科を選ぶ!
まあそれが私たちには難しいわけですけどw
歯科矯正のリスク3:歯根吸収
歯列矯正のリスクの3つ目は歯根吸収。
歯根吸収は歯根、つまり歯の根っこが短くなってしまう症状。
歯列矯正でよく起こる症状で、残念ながら吸収されてしまった歯根は回復できません。
ただ、歯が抜け落ちるほどの歯根吸収はまずあり得ないため過度に心配する必要はないというのが大方の見方のようです。
「大人の男性」は歯根吸収の重症化リスクがトップレベル
広島大学病院の調査(矯正歯科治療に伴う歯根吸収と宿主要因との関連性に関する臨床調査)によると、マルチブラケット、いわゆるワイヤー矯正した人のうち歯根吸収が起きた人の割合は78.2%。
また歯根吸収が起きた歯のうち歯根の1/4以上が吸収された重症の発生率は、
- 20歳未満 7~8%台
- 大人(20歳以上)16.3%
と大人の方が高いですね。
さらに性別で見ると、
- 男性 14.0%
- 女性 9.3%
ということで年齢・性別でいえば、40代後半アラフィフ男の自分は、歯根吸収の重症化リスクがトップレベルということになりますね。残念…
歯根吸収を防ぐには
矯正歯科のウェブサイトを見まくりましたが、残念ながら歯根吸収のはっきりとした原因は特定されていない模様。
歯根の1/3以上が吸収されるような重症の場合でもいきなりボロっと歯が抜けることはまずないため、矯正歯科のサイトでも多少の歯根吸収は仕方が無いという雰囲気が感じられました。
矯正専門の歯科医でもコントロールできないなら、もちろん私たち患者はなんとも対処しようがないですよね…
歯を動かす時に「ムダに強い力」「ムダな動き」が多いと余計に歯根吸収が進むとの見解があるようですので、私たちができることを強いて言えば、腕のよい矯正歯科を選ぶってことでしょうか。
なんだか元も子もない結論になってしまいましたw
歯科矯正のリスク4:歯肉退縮
歯列矯正のリスクの4つ目は歯肉退縮。
歯肉、つまり歯ぐきが下がって歯根(歯の根元)が露出してしまうこと。
歯肉退縮により歯根が露出すると、前歯が長くなったように見えるほか、知覚過敏になる場合があります。
歯肉退縮の原因
歯肉退縮が起こる大きな原因は以下の2つ。
- 歯列拡大
- 歯槽骨の吸収
(1) 歯列拡大による歯肉退縮
歯がデコボコに生えている人の矯正では、歯列そのものを大きくして歯がキレイに並ぶためのスペースを確保することがあります。
この歯列拡大は、歯の移動先に十分な歯周組織(歯槽骨・歯茎)があることが前提。
ただ、特に非抜歯で矯正する場合は、無理をして歯周組織ぎりぎりまで歯列を拡大することに。
▼そうすると結果としてこの画像のように歯茎が下がってしまうということですね。
(2) 歯槽骨の吸収による歯肉退縮
歯肉退縮が起きる大きな原因の2つ目は、歯槽骨の吸収。
歯を支えている歯槽骨が減ってしまうことで、その上を覆っている歯茎も下がってしまう。
原理としては歯周病と同じですね。
関連記事 俺が重度の歯周病?!ってそもそもどんな病気だっけ?治療方法やその効果
矯正中に歯槽骨の吸収が起きる原因は、歯周病の進行のほか、歯に無理な力をかけること。
矯正で歯が動く原理は「歯槽骨の破壊と再生」ですが、歯に過度な力をかけると歯槽骨が十分に再生されない(再生が間に合わない)というのが通説のようです。
関連記事 【寝れない?死にそう?】矯正中の歯の痛みって?何日続く?ピークは?
歯肉退縮を防ぐには
歯肉退縮が起こる大きな2つの原因から考えると、
- ムリのある歯列拡大はしない
- 歯槽骨を吸収させない
ということになりますが、まあこちらも私たち患者側ができることは限られていますよね。
まずは、特に非抜歯の矯正で歯列拡大が必要と言われたときは、歯周組織をはみ出すようなムリな拡大ではないかをあらかじめ確認することでしょうか。
次に、歯槽骨の破壊・再生バランスを崩さないよう「歯にムリな力をかけない」ってことですが、これは腕のよい矯正歯科を選ぶしかないですね。またそれかよって感じですがw
そして、私たち大人、特に歯周病と言われた人が一番気を付けるべき、そしてできることは、
- 矯正する前に歯周病をしっかり治しておく!
- とにかく歯周病を再発させないようケアを徹底!
なんといっても私は重度の歯周病と宣告されたアラフィフのオッサン。
先生から「矯正してOK」の一言をもらうまで歯周病治療に通い続けました。
歯槽骨は歯周菌に侵されてかなり減っており、すでに歯茎も下がっています。
治療によって進行が落ち着いているとはいえ、歯周病という爆弾を抱えている以上、矯正による歯肉退縮発生の高リスク群であることは間違いないでしょう。
なので『これ以上歯根を露出させてたまるか!』と、毎日歯ミガキをがんばっていますw
歯科矯正のリスク5:ブラックトライアングル
歯列矯正のリスクの5つ目はブラックトライアングル。
ブラックトライアングルとは、両隣の歯と歯茎の間にできる三角形の隙間のこと。
歯周病や加齢ですでに歯茎が退縮している大人は避けて通れないというのが通説のようです。
ブラックトライアングルの原因
ブラックトライアングルの原因は、先ほどお話しした歯茎退縮。
すでに歯茎が退縮していても、矯正前は歯が重なったり傾いたりしているためブラックトライアングルは隠れています。
しかし矯正によって歯並びが揃うと、本来の歯茎のラインが表に出るため、突如としてその姿を現すわけですね。
ブラックトライアングルを防ぐには
歯周病や加齢ですでに歯茎が退縮している大人は、ブラックトライアングル発生の仕組み上、これを完全に防ぐことは難しいですね…
私たち大人の患者ができることは、ブラックトライアングルをできるだけ拡大させないため、原因となる歯肉退縮をこれ以上進行させない、つまり、
- 矯正する前に歯周病をしっかり治しておく!
- とにかく歯周病を再発させないようケアを徹底!
ということになります。
これは予防ではなく対処療法になりますが、できてしまったブラックトライアングルを少しでも目立たなくしたい場合は、ストリッピングを行うのが一般的なようです。
この場合のストリッピングとは、歯の横側をほんの少しだけ削って歯を寄せること。
削る量は最大で歯の片側0.25mmと非常にわずかですので、歯がしみたりといった副作用はまず無いというのが通説のようです。
私の治療計画にもストリッピングが入っていて、ある程度歯並びが揃ってブラックトライアングルの大きさが見えてきた段階で削るかどうかを決めることになりそうです。
まあ、できれば歯を削ることはしたくないですが、見た目の悪さをどう考えるかですね…
歯科矯正のリスク6:歯髄壊死
歯列矯正のリスクの6つ目は歯髄壊死。
歯髄壊死とは、歯の奥にある歯髄(血管・神経)が何らかの理由で壊死すること。
ひどい虫歯になったときの処置で「神経を抜いた」なんて言いますが、簡単にいうとその「神経」が死んでしまった状態ということですね。
歯髄壊死した歯は、黒っぽく変色したり、歯が脆くなって寿命が短くなるとのこと。
歯髄壊死の原因
歯髄壊死は、
- 歯髄が虫歯菌に侵されてしまった
- ぶつけたなどの強い衝撃で歯の根元の血管・神経が切れた
といった原因で起こるのが通説。
ではなぜ歯列矯正で歯髄壊死が起きるのか?
残念ながら矯正中に歯髄壊死が起きる原因は特定されていないのが現状のようです。
もっと言えば、歯髄壊死が起きた原因が矯正治療にあるのかどうかさえわからない、というのが大方の見方。
強いえ言えば「歯を動かす際に必要以上の力をかけた」というのが可能性として考えられるわけですね。
歯髄壊死を防ぐには
歯髄壊死は矯正が原因なのかどうかさえわかりませんので、歯髄壊死を防ぐために私たち患者ができることは無いに等しいでしょう。
強いえ言えば、同じことばかり言っていますが、歯にムリな力をかけない腕のよい矯正歯科を選ぶw
で、私たち大人が気になるのは『大人は歯髄壊死が起きる率が高いの?』という点。
数少ない日本矯正歯科学会の臨床指導医が院長を務める千葉県八千代市のまきの矯正歯科クリニックによると、
歯髄壊死の発生率
当院の経験ですと1000人中で疑わしいものも含め8人いました。つまり発生率は0.8%程度と言えます。年齢や症例の難易度などにも相関性はありません。
まきの矯正歯科クリニック
歯髄壊死は発生率そのものが低く、矯正患者の年代は関係がないとのことですので、大人の矯正だからと言ってなにか特別に注意すべき点などはなさそうです。
なので過度に心配せず『起きてしまったらしょうがない』ぐらいに捉えるしかなさそうですねw
不幸にして歯髄壊死が起きてしまった場合は、変色した歯を漂白して他の歯と色をあわせることができるようです。
逆に言えばそれ以上どうしようもないってことですねw
歯科矯正のリスク7:顎関節症
日本顎関節学会顎関節症治療の指針2020に記載されている顎関節症の症状をかみ砕いて言うと、
- 顎を動かすと痛む
- 顎を動かすと音が鳴る
- 口を開けにくい
- 顎がひっかかったりとスムーズに動かない
また顎関節症は顎の形や噛み合わせだけでなく、日常の行動や精神面など多くの要素が積み重なって発症すると考えられているようです。
そのため、考えられる原因をひとつひとつ取り除いていくしかないというのが今の顎関節症の治療方針。
つまり矯正中に顎関節症が発症したからといって「矯正そのものに原因がある」とは言い切れないということですね。
大人が矯正で顎関節症になるリスク
大人が矯正で顎関節症になるリスクは高いのか?
残念ながら、ずばり歯科矯正中に顎関節症が発症する率を示すデータは見つけられませんでした…
参考になるデータとして、厚生労働省が2016年(平成28年)に行った歯科疾患実態調査によると、
- 顎関節に痛みがある人の割合が最も高いのは20代前半の女性
- 20代以上の大人では全般的に女性が多い
これを単純に矯正中の発症率として置き換えるのはもちろん無理がありますが、一般的な傾向として、私のようなアラフィフ、しかもオッサンが極度に顎関節症を恐れる必要はないと言えそうです。
矯正中に顎関節症が発症する原因
矯正中の顎関節症は「矯正そのものに原因がある」とは言い切れないというお話をしました。
しかしそうは言っても、今まで大丈夫だったのに矯正中に顎関節症が発症したのであれば「矯正に原因がある」と考えるのが自然ですよね。
大宮駅前、インビザラインのダイアモンドプロバイダーが院長を務める大宮SHIN矯正歯科によると、矯正治療中に顎関節症が起こる原因として考えられるのは以下の2つ。
1) 一時的な噛み合わせ不良
矯正治療中は歯が動くことに伴って噛み合わせもどんどん変わっていきます。
顎の使い方の変化によって顎関節への負荷のかかり方がこれまでと変わることで、一時的に顎関節症の症状が起きることがある。
これは理屈としてすごく納得ですよね。
2) 矯正治療に対するストレス
先ほど触れたとおり顎関節症になる要素は多岐にわたり、精神面もそのひとつ。
- 矯正治療に対する不安
- 矯正装置の違和感
- 歯の痛み
こういった矯正ならではのストレスが歯ぎしりや食いしばりを起こし、顎関節症に繋がるということですね。
矯正中の顎関節症を防ぐには
矯正治療中は、顎関節症の発症要素に以下の2つが加わるのは避けられません。
- 一時的な噛み合わせ不良
- 矯正治療に対するストレス
ということは、増えた分あるいはそれ以上に、顎関節症を起こすそれ以外の要素を減らすしかないですねw
日本顎関節学会顎関節症治療の指針2020に例示されている日常生活での発症要素を並べると、
- 緊張する仕事
- 多忙な生活
- 対人関係の緊張
- 硬いものをかみ砕く
- 長い時間食べ物をかむ
- 楽器演奏
- 長時間のデスクワーク
- 単純作業
- 重量物運搬
- 編み物
- 絵画
- 料理
- ある種のスポーツ
- 日中の歯ぎしり
- 日中の姿勢
- 睡眠中の歯ぎしり
- 睡眠中の姿勢
矯正治療とは直接関係していないことが多いですねw
ただ、こういった顎関節症が起きる要素を減らせるだけ減らすことが、結果として発症リスクの低下につながるということです。